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これが私のリニアンスィ
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「───ねぇ、本当の事を教えてください。あなたの、本当の目的は何なんですか…?」
宵闇に閉ざされた医局に、二つの影が落ちている。
クレマリーはそう問いかけるルミエールから目を逸らすと、窓の外の喧騒を眺めた。緊急車両のサイレンが赤く危険の信号を掲げている。人々が次々とその場に伏せ、それはまるで地獄絵図で……。
……その様子を悲しげに見遣りながら、彼女は静かに告げた。
「……私は、人類を滅ぼそうなどと思っていない。神として王座に着くつもりもない。そして───そもそも、生きようとすら思っていない。」
そこで彼女は振り返った。血液のように紅い月を背に背負い───そして赦されざる罪をも背負って、決意を宿した瞳で語る。……その手に、メスが握られていた。
「私はずっと、死にたかった。だがこの身体が、それを許さない───だから感染者を増やして力を削ぐ事を試みた。今この瞬間、私は《病魔》としての力を持たぬただの人間だ。死ぬ事など容易いだろう」
「な……」
「───私の自殺(スーサイダル)を持って、パンデミックは終焉を迎え世界は平穏を取り戻す。これが、死神の私から贈る……お前達への慈悲(リニアンスィ)だ」
「やめ───!」
ルミエールの静止を待たず、クレマリーはメスを己の頸に突き立てた。
迸る緋色の飛沫が、悲劇が起こった事を……残酷に、明確に物語っていた。
「クレマリーさんッ…!死なないで、死なないでください……ッ」
「来るな……ッ。お前の体内に宿る腫瘍を成長させる事が、私には出来るんだぞ……」
「でも…ッ」
「これでいい……これでいいんだ───ッ!」
続いて胸元にも鋭利な刃を差し出せば、それは柔らかな身体に吸い込まれていく。
緋色のブローチが衣服を穢して……ルミエールはいよいよ泣きそうになりながら駆け寄り、倒れた彼女の躯体を受け止めた。必死にハンカチを創部に当てるも、出血が止まる事は叶わない。
「死なないで……ッ、泣かないで、ください……」
「は…泣い、ているのは…お前、だろうが……お前はいつも……優し、すぎる…んだ……」
それを最後に、彼女は瞳を固く閉ざした。
沈黙が、周囲を包む───久遠にも感じられる休符の末、ルミエールはクレマリーを抱えて立ち上がった。
「……僕が、必ず救います。『目の前の命は絶対に見捨てない』……それが、あなたから教わった事だから……ッ!」
───さぁ、始めましょう。
あなたを『救う』、サージェリーを。


